中国チベット自治区
2024年6月から7月にかけて、長年の夢だったチベット旅行に行ってきました。学生の頃から、ダライ・ラマの伝記や映画『セブンイヤーズ・イン・チベット』などを通じて、ヒマラヤ山脈に広がるチベット仏教の神秘的な世界に魅了されており、「今行かないと絶対に行く機会はない」と思い立ち、チベットの玄関口である中国・西寧までの往復航空券を購入しました。
しかし、旅行の計画を立てるうちに、その無計画さを痛感しました。まず、西寧からチベットの中心都市ラサへ向かう青蔵鉄道のチケット購入方法が分からず、困りましたが、中国系のTrip.comで予約できました。その後、中国ビザを申請し、ビザ取得後にはチベット入域許可証も旅行代理店を通して申請する必要があると判明しました。許可証を取得するためには、チベット滞在中はガイドを雇い、政府が指定した専用車を使用する必要があり、ガイドと運転手と一緒に行動しなければなりません。これらの手配を旅行代理店に依頼し、出発前に準備が整いましたが、予算は予定よりも大幅に上がりました。
羽田から上海、西寧を経由し、青蔵鉄道で21時間かけてラサに向かいました。西寧では、観光関係者でさえ英語が全く通じず、中国語以外話すつもりがない様子に驚きました。さらに、LineやMessenger、Facebook、Googleなどのツールがインターネット規制で使えず、カルチャーショックを受けました。VPNを使えば規制を回避できるようですが、中国に入ってからではダウンロードもできず断念。デジタルデトックスも良いかと思いましたが、旅をする上で非常に不便でした。旅行が続行できたものの、下調べの不足を反省しました。
チベットへの玄関口、西寧の街は、こんなに近代的、中国の情報は自分の中でアップデートされていなかったので、経済力と都市計画の元に作られた都市に圧倒されました。
西寧ーラサへ青蔵鉄道で向かいます。
西寧を午後に出発し、ラサに翌日昼頃到着。寝台列車で目覚めるとラサの標高3700mで、高山病の症状が出て動けないほどの頭痛に襲われました。列車は5000m級の高地を通るため、寝台の頭から出る高濃度酸素を吸引する必要があるのですが、係員が中国語でしか説明しなかったため、私はその方法を知りませんでした。隣の女性が吸引する様子を見て、怒りを覚えながらもチューブを借り、自分の寝台で吸引すると、数時間後には立ち上がれるようになりました。
ラサに到着し、外に出て歩き始めると呼吸もしやすくなり、多少体調が良くなりましたが、その日はホテルで高濃度酸素を吸いながら休みました。滞在中一週間のうち、最初の4日間は高山病のまま観光を続けました。特に2日目に訪れたポタラ宮殿では、体調が悪く顔も腫れ、長時間の歩行が必要でした。写真にはひどい顔が写っておりがっかりしました。
ラサの街は、中国からの侵攻を受けて、ポタラ宮殿は今では観光地になってしまい、普通の中国の計画都市のように発展しているところもあります。それでも、大昭寺の周りに広がる旧市街地などは、中世の街並みをいまだに残しているように思います。五体投地をしながら巡礼をする方々も沢山見ることができます。
ここでは、特に印象に残ったことと、出会った音楽のことで締めくくりたいと思います。
ポタラ宮殿と酸素吸入する自分の写真
チベットの文化について特に印象に残ったことは;
チベット仏教の死生観: 亡くなると9割以上が鳥葬となり、鳥が遺体をすべて食べ尽くすため、地上に何も残らないとのこと。日本の葬儀との違いに圧倒されました。
貯金しない文化: ガイドは、日本人が30〜40年後を心配して貯金することが理解できないと何回も言っていました。遊牧民としてヤクと土地さえあれば生きていけるし、そんな先の人生の心配をする感覚がわからないと。しかし、聞いてみると平均寿命が64歳と思ったよりも短く、高度先端医療で延命することがないということも関係していると思います。
チベット美術の保存: 文化大革命や中国の侵攻で多くが破壊されましたが、僧侶により隠されてきたものや近年作られたものが多くあり、チベット仏教は中国の侵攻や、ダライ・ラマのシステムが継承されなくなることがあっても生き続けると感じました。
旅で出会った音楽は次の3種類;
読経(チャント): 様々な太鼓やシンバルが使われていて私たちが一般的に考える音楽の概念とは違うかもしれませんが、お寺の音風景です。
お寺を見学する中で非常に貴重な読経の様子を見ることができましたが、残念ながら、お寺内部の撮影は禁止されているために映像はありません。右は、チベット仏教チャントの参考までに掲載しました。
下はお寺内で読経の時に使う楽器です。有名なお寺の周りには巡礼にくる僧侶のためにこのような専門店がありました。
2. チベット民謡:
こちらの映像はラサからシガツェという街に向かう間に昼食のために立ち寄った食堂の流しの音楽家の演奏です。ダニェン(右写真)という弦楽器と共に演奏され、どの家庭にもあり親しまれています。
3. 漢民族の歌謡曲
チベット自治区内には、新境地でビジネスを始める人や公務員など沢山の漢民族が入ってきています。観光旅行者もとても多く、日本の80年代に流行ったようなテレサ・テンっぽい音楽がよく流れています。それから、チベットの民謡をベースに漢民族の歌謡曲風に仕上げたようなものも多い印象でした。